岡山の企業インタビュー木を大事に使い切る循環型の事業運営で業界を牽引
岡山県の地元企業インタビュー
木を大事に使い切る循環型の事業運営で業界を牽引
銘建工業株式会社
代表取締役社長 中島浩一郎
集成材の国内最大手メーカーである銘建工業は、最先端の木材バイオマス事業でも知られ、自然豊かな岡山県真庭市を本拠地としながら、その先進的な取り組みで国内外から脚光を浴びている。今回は、同社の社長として手腕をふるう中島浩一郎代表取締役社長に直接お話をうかがった。
銘建工業様の事業内容をお聞かせください
主に挽き板を使用した構造材を作っています。1923年に製材品の製造を開始し、1970年から集成材、2010年からは新素材のCLTを手掛けています。また、木材を大事に使い切るため、「バイオマス」という言葉が浸透する以前から製造工程で出る木屑や木皮の活用を進めて来ました。1984年に175kwの発電を始め、10年前に木質ペレットの加工販売も開始しました。現在ペレットの国内生産約6万トンのうち3分の1をわが社が生産しています。その他、小動物の飼育に使う床敷材への加工も行っています。これらの派生事業がなければ、逆に今の当社はないかもしれません。主力事業で思い切ったステップを踏めるのは、これらの事業が上手く回っているお蔭です。
他社に比べて強みとなっていることは何ですか?
技術の伝承はもちろん、量産から一品生産まで対応できることや、付随事業でしっかり利益を出していることが挙げられますが、一番は先行して思い切った判断と設備投資をしてきたことでしょうか。例えば、1993年、他社に先駆けて木材の輸入先を北米主軸から欧州にシフトしました。それまでヨーロッパ材は運送コストがネックでしたが、ドイツマルクが下落しコンテナ輸送が本格化してきたタイミングで、ただちに輸入開始を決めました。同時に大型の工場を建設して生産量を4~5倍に拡大し、流通センターも新しく設置しました。また、1998年には生産量の拡大にともない増えた木屑を活用するため、木質バイオマス発電所を建設しました。大規模な投資でしたが、廃棄費用を削減できた上、使用電力を自社でまかない、2003年から売電による利益も得られるようになりました。
集成材について教えて下さい
集成材は木の性格をそのまま受け継ぎながら、より安定的で強度のある形状に加工したものです。木の重量は鉄に比べとても軽いので、大型の木造建築物では基礎工事の負担が少なく、短時間・低コストにつながります。また、断熱性があるためエネルギーロスも非常に少ないのが特徴です。木は火に弱いと思われていますが、例えば厚さ15センチの壁を隔てて隣の部屋が1000℃の熱で1時間燃えていても、こちら側の室内は20度に保たれ壁に触れても熱くありません。さらに、新素材のCLTは大変頑丈です。5階建て相当の状態で耐震実験を行ないましたが、結局倒壊させることができず、実験が失敗に終わったほどです。
現在活躍されている方と「求める人材」について教えて下さい
ここ5年ほどで入社してきた方は、皆さん意欲的な方が多く心強いです。また、物事に興味がある人はどんどん成長するな、と驚いています。農学部出身ながら専門外の建築について熱心に勉強して、入社2年目にして建築学の大学教授と専門的なやり取りをし、しっかりとしたレポートを作成する若手もいます。また、当社では縁もゆかりもない岡山に移住して来た首都圏出身の社員も活躍しています。求める人物ですが、色んなタイプの人間がいた方が会社は面白いと思っています。本質的に人として誠実であり、その上で個々の良さを持っていることが大切だと思います。若い方ならば好奇心や興味を持って行動する方がいいですね。
今後の事業の展望をお聞かせ下さい
木は、廃材までエネルギーとして利用できる循環資源であり、耐震・耐火性能という大事な機能を備え、さらには21世紀の価値ともいえる“軽さ”が特徴の素材です。色んな価値がオールインワンになった素材であり、大変幸せなものをベースに仕事をさせてもらっていると思います。「木材を大事に使い尽くす」という私たちの考えは、21世紀の時代のテーマとマッチしてより実現しやすくなっているため、派生事業の可能性はまだまだ広がっていると感じます。主力事業においては、今まで構築して来た海外とのネットワークをもとに、国産材と輸入材を組み合わせた活用が、今後益々進むのではないでしょうか。
銘建工業株式会社
代表取締役社長 中島浩一郎
1976年 横浜市立大学文理学部卒業
1976年 銘建工業株式会社入社
2004年 代表取締役社長